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14年度開催結果


2002年 作文の部<中学生部門>入賞作品
独立行政法人 航空宇宙技術研究所理事長賞

「銀河中央駅で見た希望の光」
綾部市立綾部中学校1年  野島 亜悠
 
遠くに見えていた光のかたまりが、目前に近づいた。宇宙に浮かんだ巨大なドーム。はっきりと「銀河中央駅」の文字が、読みとれるくらいの距離になっている。
周りの旅行者達が、下車の準備にとりかかる。私も、リュックを背おい、「入星許可証」を手にした。
光のホームに下り立つ。太陽系のジャンクションのこの駅は、さまざまな星の旅行者達で、あふれている。私は、待ち合わせフロア-の「銀河の鈴広場」に向かった。
私の隣で待っている、青い海王星人が話している。
「土星の輪のオリンピックは、面白かったですよ。外の輪で陸上、内の輪でスピードスケートをやるんです。」
その前の緑色の水星人が答える。
「太陽のプロミネンスくぐりも、盛り上がっていましたよ。」
興味深そうに聞いている私の頭上で、聞き覚えのある声がした。
「アユ、お待たせ。」
今日の待ち合わせ相手、友人のイオとオールトが、ニコニコ笑って立っている。
「よく来てくれたね。嬉しいよ。」
私達は再会を喜び合う。三人は、銀河中央駅発のシャトルに乗り込み、新たな目的地へと飛び立った。
半年前、私の住む地球で三人は出会った。日本海で、大型タンカーの事故が起きた。海はひどく汚染され、多くの生物が油にまみれて命を落とした。各地から集まったボランティア達の、懸命な手作業による人海戦術にも、限界があった。
「海が死んでしまう。」人々が絶望しかけたその時、惑星からのボランティア達が、やって来た。彼等は、海水から、油だけをそっくり抜き出すという技術を持っていた。お陰で、もうダメかと思われた海が、息をふき返したのだ。
惑星ボランティアの中で、私と親しくなった異星人が二人いた。それが、天王星人のオールトと、土星人のイオだ。

今私は、その時のお礼に宇宙へやって来た。今度は、二人が私の助けを求めている。人口のふくれあがった地球が、宇宙に投棄してしまったゴミ。それが土星や天王星や海王星のリングに吸収され、リングの粒子の中に、ちらばっているのだ。
地球の犯した過ち。地球人の私としては、じっとしていられるはずはない。リングの空間に漂っているゴミを、一つ一つシャトルでまわり、回収してゆく。
「不燃物ばかり。地球で処理しきれなくなって、宇宙にまで投てるなんて、恥ずかしいよ。」
と、私は二人に言った。
すると、イオが言った。
「自分達に便利な生活をしようとすれば、環境が悪くなるの?そんなの、進歩的なことじゃないよ。」
オールトも言う。
「僕達の星では、環境を一つでも壊すような発明は、認められていないんだよ。」

ゴミの回収人数は、かなりのものになっていた。さまざまな外見、色、言葉の異星人であふれている。イオが言った。
「僕の星は、一番たくさんの種類の宇宙人が、住んでいるんだ。それだけ多くの能力が集まっているということで、優秀な星なんだよ。アユの星はどうだい?」
「私の地球では……人種の違いを、認められずにいる問題があるの。」
「地球人は、人種が違うと、なぜだめなんだい?」
オールトも不思議そう。私も、この疑問に答えることが、できない。
「人種や、宗教のことで戦争がおこり、死ぬ人達が、いつもどこかの国にいることが、地球の大きな問題の一つなの。」
私が言うと、イオも、オールトもますますわからない、といった様子で尋ねた。
「どうして、死ぬことが国のためになるの?国民が、国のために生きなくちゃ、国は栄えないじゃないか。」
本当にそうだ。地球には、おかしなことがいっぱいある。こうやって、回収して集められているゴミのように、地球のヘンなところを、すっかり回収してしまいたい。二人の純粋な疑問に、ちゃんと答えられることが、何一つないじゃないか……。
考え込んでしまった私に、イオが語りかけた。
「アユ、落ち込まないで。アユを責めているんじゃないよ。」
オールトも言う。
「地球には、過ちに気付いた人や、既に地球を守るために、活動を初めている人達も、たくさんいるじゃない。アユも、その一人だしね。」
イオが続けた。
「気付くこと、行動を始めること、それを続けることは、今の地球に大切なことだね。自分の星を守ることは、自分達を守るということだ。地球人は、きっとこのことが解るはずだよ。」
優しい二人の異星の友人の言葉は、私の中にしみ込んでゆく。二人と知り合えてよかった。しみじみ有難く思う。そして、二人に答えられないような行ないを、地球からなくすために私が立ち上がろう、と決意した。

リングは、すっかりきれいになっていた。
私は、再び銀河中央駅にもどってきた。私が来た時と同じように、いろんな星の旅行者達でにぎわっている。でも、私の中で何かが変化していた。
輝く光の銀河中央駅。地球の輝かしい未来への出発も、もう確実に始まっている、と感じていた。


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