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14年度開催結果


2002年 作文の部<中学生部門>入賞作品
日本科学未来館館長賞

「いて座A」
小山市立小山第三中学校1年  高井 俊宏
 
「目的地、銀河系中心、いて座A。」
ぼくは宇宙船のコンピューターに、打ち込んだ。小さい頃、天の川を見ては、
「あの光の帯に行きたい。」
と何度も繰り返していた。その度に周りの大人は、
「宇宙には、二千億以上の銀河があるのだから、何も中心部へ行くことはないぞ。」
と言った。そこには巨大なブラックホールがあって、引きずり込まれてしまうというのだった。けれど、ぼくは何も迷わなかった。地球から約二万八千光年先のたびをする決心は変わらない。
「うわぁ。」
天の川が目の前に広がっている。地球から見た天の川は、実は円ばんの型をしていた。小さい頃からの夢が叶ったのだから嬉しいはずだけど、ここまでくると、
「ブラックホールに、引き込まれてしまうんだよ。」
という大人の言葉が、頭に浮かんでいた。それでも宇宙船は、天の川の幅が広くなっている、最も明るい部分に向かっている。
「あれが目的地か。」
目的地から、ものすごい勢いでガスが噴き上げている。しかし、不思議と宇宙船の危険ランプは点滅していない。目的地を取り囲むように厚いガスの円ばんができていて、それが高速で回っている。思わず、宇宙船を停めたぼくは、しばらく、その様子を見ていた。
「間違いなく、引き込まれるな。」
回っているガスの内側は、目的地に引き込まれていた。さすがに、怖くなってきた。今まで、目的地へ行くことばかり考えていたのだけれど、ぼうっと外を見ているうちに、たくさんの星が、生まれていることに気がついた。
「あっ。」
「あっ。」
それ以上、何の声も出せないくらい、次々と誕生していた。生まれてすぐに、小さな星は青白い光を放って輝いていた。
「百四十億年も前から、こうやって銀河で星が産まれていたんだな。」
そう言っている間に、みんなの反対を押しきって、夢を叶えにやってきたことを想い出した。しっかり、ガスが噴き出している目的地を見て、スタートのスイッチを押した。
「行くぞ。」

宇宙船は、うずに巻き込まれ、ぐるぐる回っていた。もう何も怖くはない。あんなに星が誕生しているのだから、ぼくがブラックホールに引き込まれて、二度と地球へ帰れなくなるなんて、あり得ないと思った。 「目的地近くです。」 コンピューターの声がした。流れは止まっているけれど、星が爆発した残がいが、あちこちにあった。そして、次々に、星がぶつかり合って、爆発していた。「星の墓場みたいだ。」
まるで、人間が戦争をして、命を捨てているような気がした。気がつくと、涙が流れていた。
「泣いている場合じゃないぞ。」
宇宙船はゆっくりと、目の前にある三方向に伸びた線に向かって進んでいる。
「エネルギー量。太陽×百兆倍。」
コンピューターは告げたが、それがどれくらいなのか、ぼくには想像できなかった。何の衝撃も感じないうちに、宇宙船が止まり、
「目的地到着です。」
とコンピューターが告げていた。

「ブラックホールなんかじゃなかった。スゴイ!」
そこはとても静かだった。
辺り一面、青白く輝く星の大集団だった。本当は期待していなかった。ブラックホールだったら、中は暗いやみで、生命の誕生も死もないと思っていたからだ。小さく燃え始めたものが、いきなり紫色に輝き、一面、パッと明るくなった。また、別の場所で燃えだした光は、優しい青白い光をだして、輝き始めた。赤く輝いているものは、少しずつ大きくなっていく。
「銀河系の中心は、生命が誕生する場所だったんだ。」
地球から見る星は、どれもたいした変わりはないけれど、こうやって見ると、一つ一つ違い、同じ物などないようだ。
ひっきりなしに生命の誕生が起こっているのだから、他の生物がいてもおかしくない。もしかすると、ぼくそっくりの生物が、かげから様子をうかがっているかもしれないと思った。

どんな星にも必ず死がやってくる。ぼくの住んでいる地球も、大きな太陽も。けれど大丈夫だ。地球も太陽も、もう生まれていて、少しずつ成長しているのを見たからだ。
中心から、太陽の百兆倍ものエネルギーを放出しているのは、たくさんの星が誕生し、生命があふれているからだった。
地球へ戻り、銀河系中心いて座Aでの発見をみんなに話すんだ。


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