「一般財団法人日本宇宙フォーラム」トップページへもどる 「宇宙の日」ホームページへ戻る
「宇宙の日」ホームページ

 

13年度開催結果


2001年 作文の部<中学生部門>入賞作品
文部科学大臣賞

「魅惑の星 X星へ」
金沢大学教育学部附属中学校3年  篠崎 友希
 
  『日本宇宙航空航空券 日本→X星行き 555便 三一六五年七月七日十五時十五分発』と書かれた航空券を母がにこにこしながら鞄から取り出した。そうなのだ。今から家族で宇宙旅行に出かけるのだ! 姉は宇宙旅行慣れしているけれど、中学生の私は初めて。昨夜は興奮してなかなか眠れなかった。
 X星はリゾート開発された星らしい。オゾン層が厚いので有害光線も少なく、有害光線警報を気にせずに防備なしで、一日中外へ出られるそうだ。水はそのまま飲めるし、緑であふれていて、空気も美味しいとのこと。
 緑かぁ・・・・・・。私の身近にある緑といえば、机の上の理科の観察用のプランターぐらいかな。いわゆる『マンションの森』にある我が家だけれど、害虫や落ち葉問題の為に樹木は植えられていない。例え、植えたとしても、酸性雨で枯れてしまうだろう。ただ、植物の癒し効果を求めて人工植物がいたる所にあるけど・・・・・・とか色々考えている内に、父のソーラーカーはもう宇宙航空場に着いていた。
 荷物をロボットに預け、搭乗ゲートに行き、航空券を機械に通し、ラウンジでアナウンスに従って、宇宙食を食べ、トイレを済ませてから、宇宙船に乗り込んだ。
 座席に着くと、自動的にシートベルトが締められ、シートが倒れてベッドのようになり、全身が透明な繭型カバーに覆われた。私は事前に姉から、この中で眠っている間に目的地に着くと聞いていた。だけど、少し恐怖感を覚えた。生きて帰れるよね? 不安になって顔を父や母の方に向けたら、母が大丈夫よというように微笑んだ。
 -発射時刻。秒読みが聞こえる。「・・・3・・・2・・・1・・・0。」次の瞬間、体が凄く重たいものに押し付けられる感覚がした。少し気分が悪い。でも睡眠効果のあるα波の音楽を聴いている内に、だんだんと眠くなっていった。音楽の音も遠のいて・・・・・・。
 -気が付くと、もうX星へ到着していた。案外短い時間だったような、でも、眠っていたから長かったのかな?
 宇宙航空場から出た途端、私を涼しいさわやかな風が包んだ。ここがX星なんだ!
 宿泊ホテルの送迎モノレールに乗った私は、窓の外の風景に釘付けになった。外は一面の緑、緑である。感動!なんて生き生きとした美しさなんだろう。ホテルの部屋からもよく見える。なのに、姉は一度窓の外を見ただけで、読書に熱中。旅慣れてくると、地球ではなかなか見られないこんな綺麗な風景を見ても感動が薄れてしまうのだろうか。私も?
 -ホテルで休んだ後、半ば強制的に姉を連れて、家族で海へ行った。水は底が見えるほど澄んでいて、沢山の小魚達が泳いでいた。「素敵な星。」母がため息を混じえて言った。「でも、この星は昔の地球をかたどった星なんですって。」母は少し寂しそうな目をした。
 ・・・・・・え?
 「人々が自らの利益だけを考えて、自然を操作し続けた結果が今の地球なのよ。よく覚えておきなさい。」私はその母の言葉が信じられなかった。本当に地球は昔こんな風な自然があったの? その地球を今のように変えたのは私達人間なの? 私は目で父に問いかけた。「残念だけど、お母さんのいう通りなんだ。まぁ、このX星の自然だって人間が操作して造ったんだけれどね。とにかくたまにはこういう環境もいいよな。虫や動物がいてさ。」
 その言葉に反応して、姉がつぶやいた。
「私は今の便利な生活の方がいいわ。」
 確かに今の便利な生活は手放せないだろう。でもそれならどうしてみんなここに来たがるの。私はここにきてよく分かった。体が訴えている。自然の中にいたいって。昔は私達も自然の一部だったらしいし、地球に戻っても自然と一緒に生きていきたい。
 夜、望遠鏡で青く輝く半月の地球を見て、私は更に強く思った。
 私の手に金色に点滅する虫が止まった。図鑑で見た事がある、確か螢だ。
 「怖くないの。」姉が、気味悪そうに言った。私は内心どきどきだったけれど、姉の手前、「全然怖くないよ。」と言ってしまった。
 もぞもぞ動かれるとちょっと不気味。でも段々慣れていった。そんな時、虫好きの父が、「ほお、螢か。珍しいな。」と言うが早いか、螢を捕まえようとした。その動きを察知して螢は光の帯を残して飛んでいってしまった。「あーあ。行っちゃった。」
 そんな風に旅行は過ぎていきました。
 今回の宇宙旅行で、私は地球を外から見直す機会を得ました。地球を自然の多かった元の姿に戻すのは至難の業だとは思うけれど、あのX星の美しい緑や生命力あふれる生き物を思い出すと、私なりに努力をしていかなければと思います。私が今度宇宙に行くときは、地球上から失われつつある自然を体感するだけでなく、宇宙の神秘も探ってみたいです。


もどる