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12年度開催結果


2000年 作文の部<小学生部門>入賞作品
(財)宇宙少年団理事長賞

「素晴らしい宇宙ニュースが流れた日」
京都府綾部市立綾部小学校5年  野島 亜悠
 
  「やはり、月との衝突は、さけられないもようです。」

 ニュースキャスターが、緊迫した様子でニュースを伝えた。これを聞いていた私も、私の家族も、(やっぱりか……。)という気持ちで、みんな黙り込んだ。

 月とすい星との衝突可能性のニュースは、三年ほど前から、ひんぱんに取りざたされるようになっていた。大型のすい星"サタンエッジワース"は、月に近づくにつれて、その威力をまざまざと私達に認識させるようになっている。まともに月と衝突すれば、地球に及ぼされる被害は、はかり知れないものがある。

 るり色の水と生物の星、地球。美しさだけではない。頭脳の集合体、地球。希望の星の呼吸を、すい星なんかの衝突で止めるわけにはいかない。

 私は愛犬のバン・アレンを連れて、自家用宇宙船ニュートリノ号に乗り込み、月の中央宇宙ステーションに向った。宇宙推進部の小学高等科に在籍してから、五年目になる私は中央宇宙ステーションでは、もう、かなりのベテランに位置している。

 中央宇宙ステーションに入ると、地球防衛部が対策会議をしていた。どの国の代表も、真剣そのものだ。この前の、木星シャトルのスイング・バイ角度調整会議の時のような余裕は、みじんもない。

 討議を重ねた結果、太陽風によってサタンエッジワースを回避しよう、ということに決まった。太陽風の収集を行う国や、自国で粒子開発に成功している国は、直接に太陽風に似た電気粒子を提供することになった。どの国も異議を申し立てる者はいない。すぐに、対応にとりかかった。

 各国のすみやかな対応が、中央宇宙ステーションの巨大モニターに、次々と映し出されていく。現在の地球は、自国を守るための戦争なんか、している場合ではない。全世界が力を合わせて、地球を守るのに必死だ。情報交換、情報提供もすばらしい連携プレーで行われていく。

 「ねえ、バン・アレン。人間って、やっぱりすばらしいよね。サタンエッジワースの襲来によって、初めて人は戦争も他の戦いも全てほっぽり出して、みんなが力を合わせられたんだよ。サタンエッジワースは、あながち悪魔とばかり、言えないね。」

 バン・アレンは、嬉しそうにシッポをふって太陽熱の収集を見ている。

 数日後、すい星の核は、全世界が一丸となって収集・集結した太陽風によって、次第に小さくなってゆき、ついには月と衝突することなく消えていった。すい星自体が、巨大な龍のように長い尾となって衝突をまぬがれた様子は、生涯私の記憶に残るであろう。

 テレビニュースは、すい星消滅の画像を何度も流して、危機を回避した喜びを語った。中でも印象的だったニュースは、各国の首脳陣が、それぞれの国の功績をほめたたえていたことだ。皆、幸福そうに握手を交わしていた。その、なごやかな平和に満ちた様子は、私ばかりでなく、世界中の人々を幸せな気分にした。

 さらに、すい星サタンエッジワースが地球にもたらした産物は、世界平和ばかりではないことが、数日後のニュースで判明した。中央宇宙ステーションが、今回宇宙より収集された太陽風を分析したところ、その中にオゾンを含む宇宙空間があることがわかったのである。オゾンを収集することが出来れば、地球のオゾンホールをふさぐことが出来るのだ。全く予期していなかった、嬉しい副産物に、全世界が再び力を合わせることとなった。

 今日も私は、ニュートリノ号に、愛犬バン・アレンを乗せて、地球のオゾンホールの調査をしている。ラジオのニュースからは、オゾンホールが、のきなみ修復されている様子が伝えられている。宇宙を知ることと同じくらい地球を守るということに、私は強い関心を持っている。今回のように、宇宙を知ることにより、地球を守ることが出来たことに、大きな喜びを感じずにはいられない。

 愛する地球。美しい地球。この、私達のふるさとの星を私達の手で守っていくためにも、宇宙開発に対する期待は大きい。地球と宇宙のすばらしいニュースを、次々と地球のみんなに伝えたい、という新たな目標を胸に、私はニュートリノ号に元気よく乗り込んだ。

 「出かけるよ、バン・アレン。」


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