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10年度開催結果


1998年 作文の部<中学生部門>入賞作品
科学技術庁長官賞

「宇宙からのプレゼント」
秋田市立秋田東中学校1年  池村 怜
 
 小学校一年生の夏、子ども博物館の前で、真っ赤に熟したトマトを見た。『宇宙トマト』と書かれてあった。宇宙トマト……? ぼくが育てているトマトとどこが違うのかなあ、と思ったのを覚えている。大きくて、重そうに垂れていて、とにかく、おいしそうだった。どんな味がするのかなあ、ああ、食べてみたい、と思った。

 今でも、真っ赤に熟した大きなトマトを食べる時、ふと、あの『宇宙トマト』を思い出すことがある。あの展示が終わった後、あのトマトはどうなったんだろう。だれかが食べたのか。だとしたら、どんな味がしたのだろう。あの『宇宙トマト』に不思議なパワーが秘められていたとしたら……。

「ドクターリョウ、第三ドーム、第七スペースファームファクトリーより、医療用トマトが送られて来ました。」

「ちょうど良かった。ここまで運んで来てくれるよう、言ってくれ。それと、ジュン君、メロン、オレンジの在庫も調べておいてくれたまえ。」

「はい、分かりました。それから、明日、又、地球から患者が到着するそうですから、ベッドの手配もしておきます。」

「よろしくお願いするよ。しかし、このスペースホスピタルも、段々、手狭になってきたね。」

「ええ、外にも、火星はじめ幾つかのスペースホスピタルがありますが、ここ、月が一番地球に近いということで、難病の方が続々と入院されますから。」

「そう言えば、ドクター。医療用宇宙植物の最初の植物は、トマトだったそうですね。」

「そうなんだよ。その昔、博物館に展示していた『宇宙トマト』を取って食べた腕白坊主がいてね。食べたら、ひざのすりきずが治ったというんだよ。まあ、昔から、地球では、『トマトが赤くなると、医者が青くなる』などという言い伝えがあったそうだけど、そのトマトに、宇宙のパワーが加わったということだろう。その腕白坊主は、野菜や盆栽とか、植物を育てるのが趣味という変わった子でね。そのトマトの不思議さにとりつかれて、生涯その宇宙トマトの研究をしたということだ。」

「その方が、伝説の博士、『ドクター怜』ですね。ドクターのご先祖様に当たられるとか。」

「いやあ、そうらしいんだよ。確かに、博士の研究のおかげで、トマトなどの宇宙植物が医学界に大きな貢献をすることになったんだ。信じられないパワーが次々と実証されたんだからね。それに、イチゴやバナナなどの果物なら、薬をいやがる子供達にも人気だ。ビタミンなどの栄養がたっぷりで、しかも治療薬にもなり、また、うれしいおやつにもなる。正に一石三鳥だよ。」

「しかし、宇宙に魅せられた博士も、ここまで、医学が宇宙を必要とするとは、その当時は考えられなかっただろうね。放射線やレーザー光線での治療は、昔からあったそうだよ。しかし、今や、宇宙線や、太陽から出る有害だと言われた光線までもが、医療用に開発され、難病治療に次々と効果を発揮してきているんだからね。月の重力は地球の六分の一だとか、火星の大気はうすくて大部分が二酸化炭素だとか、それぞれの星の特徴を生かしたホスピタル建設が行われて、独自の成果を上げているのもすばらしいことだよ。これらの宇宙の恵みは、正に『宇宙からのプレゼント』というところかな。」

「ドクター、一九五七年に世界初の人工衛星スプートニク一号が打ち上げられてから、二百年ですよ。科学は驚くほど進化しましたね。ドクターやぼくのふる里日本の月探査機『ルナーA』は、一九九九年に打ち上げと出遅れたけど、その後、ドクターのご先祖の『ドクター怜』の活躍で、一気に宇宙計画が進みましたね。うれしいですよ。」

「これからも、科学はますます進歩することだろう。医学界への貢献は、君達若手ドクターの肩にかかっているんだからね。がんばってくれたまえ。」

「はい。一時期の地球は、科学の進歩ばかりを求める余り、壊滅の危機がおとずれたことがありましたが、そんなことがないよう、地球にやさしい、宇宙にやさしい、開発をしていかなければならないと思っています。」

「期待しているよ。」

 子ども博物館前に置かれていた、六年前のあの宇宙トマトは、その後一体どうなったのだろう?


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